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「シミ」とひとことで言いますが、医学的には別々の病名がついた、まったく違うものの集まりです。そして種類を取り違えると、良かれと思ってやったことで濃くなることがあります。
これは体感の話ではありません。日本皮膚科学会・日本形成外科学会・日本美容皮膚科学会が厚生労働科学研究としてまとめた「美容医療診療指針」に、はっきり書かれています。
この記事では、その指針の記述をもとにシミの種類の見分け方と、なぜ自己判断が危ないのかを整理します。私自身、皮膚科でレーザー治療を受けた経験がありますが、当時は種類の違いをまったく知りませんでした。
シミは5種類ある|医学用語での分類
指針の冒頭に、こう書かれています。
シミは一般的用語として用いられる。本来の医学用語では、後天性のメラニン色素沈着症を指し、日光黒子(老人性色素斑)、肝斑、雀卵斑、真皮メラノサイトーシス(両側性遅発性太田母斑)、炎症後色素沈着症などがあり、これらが混在することも多い。この中で最も多く見られるのが日光黒子である。また再発・難治性で治療に難渋するのが肝斑である。
美容医療診療指針(日本皮膚科学会ほか/令和元年度厚生労働科学特別研究事業)
読みにくい漢字が並びますが、押さえるべきは3点です。
- 「シミ」は俗称で、中身は5種類ほどに分かれる
- 混在することも多い=顔の中に2種類が同時にあるのが普通
- いちばん多いのが日光黒子、いちばん治りにくいのが肝斑
| 名前 | 読み方 | ざっくり言うと |
|---|---|---|
| 日光黒子(老人性色素斑) | にっこうこくし | 紫外線の蓄積でできる、いわゆる「シミ」の代表 |
| 肝斑 | かんぱん | 頬に左右対称。紫外線と女性ホルモンが悪化因子 |
| 雀卵斑 | じゃくらんはん | そばかす。子どものころから出ることが多い |
| 真皮メラノサイトーシス | — | 両側性遅発性太田母斑。皮膚の深い層にある |
| 炎症後色素沈着症 | — | ニキビや傷、かぶれのあとに残る色素沈着 |
いちばん多いのは日光黒子(老人性色素斑)
指針は日光黒子の特徴をこう説明しています。
主として40歳以上で、日光露光部である顔、手背、前腕などに加齢とともに出現する。境界が不鮮明で斑状の色素沈着症である。褐色からやや黒色で、直径が数mmから1cmを超えるものまであり、小斑型、大斑型、白斑黒皮型がある。
美容医療診療指針
顔だけでなく手の甲や前腕にも出るのが特徴です。手の甲にも同じようなものがあれば、日光黒子である可能性が高くなります。逆に頬にだけ左右対称にある場合は、日光黒子ではないかもしれません。
🔴 自己判断がいちばん危ないのはここ
指針は、日光黒子と見分けるべきものとして肝斑、真皮メラノサイトーシス、色素性母斑、カフェオレ斑、悪性黒子、脂漏性角化症、雀卵斑、日光角化症を挙げたうえで、こう続けます。
最も問題となるのは、悪性腫瘍との鑑別である。疑いのある症例ではレーザー治療前にダーモスコピーおよび生検による精査を考慮する必要がある。不適切なレーザー治療によりダーモスコピー像を修飾してしまい、悪性腫瘍の診断を困難にする危険性があるからである。
美容医療診療指針
「シミだと思っていたものが悪性腫瘍だった」場合、先にレーザーを当ててしまうと、あとから診断すること自体が難しくなるという指摘です。
次のような変化があるものは、美容目的で扱う前に皮膚科で診てもらってください。
- 短期間で大きくなっている/形がいびつになってきた
- 色がまだらで、濃い部分と薄い部分が混ざっている
- 盛り上がってきた、出血した、かさぶたを繰り返す
- 1つだけ明らかに様子が違う
皮膚科の選び方については皮膚科だったらどこでも一緒?シミ取りレーザーをする際に重視すべき3つのポイントに書いています。
いちばん厄介なのは肝斑(かんぱん)
指針が「再発・難治性で治療に難渋する」と名指ししているのが肝斑です。
肝斑の治療では診断が重要である。特に、両側性遅発性太田母斑(真皮メラノサイトーシス)との鑑別が難しい。他にリール黒皮症や炎症後色素沈着症、光接触皮膚炎などとの鑑別も必要になる。また日光黒子(老人性色素斑)など他の色素異常症との合併もみられる。
美容医療診療指針
専門医でも見分けが難しいと書かれているものを、鏡の前で自己判断するのは無理がある、ということです。
悪化因子についても明記されています。
紫外線曝露および女性ホルモンが主たる悪化因子であることが知られており、特に紫外線曝露が発症要因として重要である。(中略)肝斑は、光老化を基盤として寛解増悪を繰り返す難治性の色素異常症であることを認識して治療にあたることが肝要である。
美容医療診療指針
妊娠・出産やピルの服用をきっかけに濃くなった、というのはよく聞く話ですが、女性ホルモンが悪化因子として指針にも挙がっています。そのうえで「特に紫外線曝露が発症要因として重要」とあります。
日光黒子と肝斑、見分けの目安
| 日光黒子(老人性色素斑) | 肝斑 | |
|---|---|---|
| 出る場所 | 顔・手の甲・前腕など、日に当たる場所 | 主に両頬。左右対称に出やすい |
| 形 | 境界が不鮮明な斑状。数mm〜1cm超 | もやっと広がる。輪郭がはっきりしない |
| 出はじめる年齢 | 主として40歳以上 | 30〜40代に多いとされる |
| 悪化する要因 | 紫外線の蓄積 | 紫外線+女性ホルモン |
| 経過 | 徐々に増える | 濃くなったり薄くなったりを繰り返す |
いちばん分かりやすい手がかりは「手の甲にも同じものがあるか」と「左右対称か」です。手の甲にもあれば日光黒子、頬に左右対称ならば肝斑を疑う、という見当はつけられます。
同じレーザーでも、種類によって評価が真逆
ここがこの記事でいちばんお伝えしたいところです。指針は日光黒子と肝斑で、レーザー治療の推奨度を分けています。
| 対象 | 推奨度 | 指針の推奨文(要約) |
|---|---|---|
| 日光黒子 | 1(強く推奨) | 治療を希望する患者には強く推奨する。レーザー・光治療は有効である |
| 肝斑 | 2(弱く提案) | 遮光、美白剤外用や内服などの保存的治療を行って、十分な効果が得られない場合に併用療法として行ってもよい |
そして、その理由がこう説明されています。
日光黒子などの治療に広く用いられている高フルエンスでのQスイッチルビーレーザーやQスイッチアレキサンドライトレーザー照射では、強い炎症が惹起されて肝斑が悪化することが知られている。
美容医療診療指針
日光黒子に効く設定のレーザーを肝斑に当てると、悪化することが知られている。——これが、種類の見分けが大事だと言い切れる根拠です。
肝斑への対処については、順番も示されています。
肝斑の対処法としては遮光に留意することが必須で、この指導が最も重要である。そのうえでメラニンの生成抑制および排出促進を狙った美白剤やピーリング作用を有する薬物・化粧品を用いた治療が行われる。近年では治療効果と安全性のメタ解析により、トラネキサム酸が肝斑の治療に有効であると報告されている。
美容医療診療指針
「遮光が必須で、この指導が最も重要」と書かれています。機器や化粧品より前に、まず日焼けを防ぐこと。順番が逆になっている人は多いのではないでしょうか(私がそうでした)。
ハイドロキノンやレチノイン酸を使っている方は、ハイドロキノンで赤くなるのは副作用?好転反応?確認すべき9つのチェックポイントとレチノイン酸は市販で買える?レチノール化粧品&クリームとの違いとはもあわせてご覧ください。
種類が分からなくても、今日からできること
指針が両方に共通して「最も重要」としているのが遮光です。種類の判断は皮膚科に任せるとしても、ここだけは今日から始められます。
- 量を守って塗る。規定量の半分だと表示のSPFは出ません(日焼け止めは正しい塗り方をしないと効果が激減する)
- 塗り直す。朝1回では夕方まで持ちません
- 室内・車内も油断しない(車内での日焼け事情)
- 帽子や日傘を併用する(UVカット帽子には2種類ある)
もうひとつがこすらないことです。指針は炎症後色素沈着症を独立した1種類として挙げています。摩擦や炎症そのものが、色素沈着の原因になり得るということです。洗顔やクレンジングで力を入れている自覚があるなら、そこを見直す価値があります。
肌がすでに乾燥して敏感になっている場合は、刺激の少ないケアから整えるほうが遠回りになりません。私が使ってきたものでは、ビーグレンの乾燥・保湿ケア トライアルセットのように少量から試せるものが、肌に合うかを確かめるのに向いています。クレンジングでこすらずに落としたい場合はナールス エークレンズのようなW洗顔不要のタイプも選択肢です。
ただし化粧品はあくまで日々のケアのためのもので、すでにあるシミの種類を見分けたり、治したりするものではありません。気になるものがあるなら、まず皮膚科で何なのかをはっきりさせるほうが確実です。
シミの種類についてよくある質問
-
シミには何種類ありますか?
美容医療診療指針では、後天性のメラニン色素沈着症として、日光黒子(老人性色素斑)、肝斑、雀卵斑(そばかす)、真皮メラノサイトーシス(両側性遅発性太田母斑)、炎症後色素沈着症などが挙げられています。
これらが混在することも多いとされ、顔の中に2種類以上が同時にあるのは珍しくありません。 -
日光黒子と肝斑はどう見分けますか?
目安は2つです。
①手の甲や前腕にも同じようなものがあるか(あれば日光黒子の可能性)
②両頬に左右対称に出ているか(であれば肝斑を疑う)
ただし指針は「両側性遅発性太田母斑との鑑別が難しい」「他の色素異常症との合併もみられる」としており、自己判断で確定することはできません。 -
肝斑にレーザーを当てると悪化するというのは本当ですか?
美容医療診療指針に「日光黒子などの治療に広く用いられている高フルエンスでのQスイッチルビーレーザーやQスイッチアレキサンドライトレーザー照射では、強い炎症が惹起されて肝斑が悪化することが知られている」と記載されています。
肝斑へのレーザー・光治療の推奨度は2(弱く提案)で、遮光や外用・内服などの保存的治療で十分な効果が得られない場合の併用療法として位置づけられています。 -
シミ対策で最初にやるべきことは何ですか?
遮光です。指針は肝斑について「遮光に留意することが必須で、この指導が最も重要である」としています。日光黒子も紫外線の蓄積でできるため、種類が分からない段階でも遮光は共通して有効です。日焼け止めは規定量を守り、塗り直すことが前提になります。
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皮膚科に行ったほうがいいのはどんなときですか?
短期間で大きくなっている、形がいびつ、色がまだら、盛り上がってきた、出血やかさぶたを繰り返す、1つだけ明らかに様子が違う——こうした変化があるときです。
指針は「最も問題となるのは、悪性腫瘍との鑑別である」とし、不適切なレーザー治療が後の診断を困難にする危険性にも触れています。 -
化粧品でシミの種類を見分けたり治したりできますか?
できません。化粧品は日々のスキンケアのためのもので、診断や治療を目的とするものではありません。種類の見分けは皮膚科での診察によります。日常のケアとしては、遮光と、摩擦を避けることが土台になります。
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ニキビ跡の色素沈着もシミの一種ですか?
美容医療診療指針では、炎症後色素沈着症が後天性のメラニン色素沈着症の1つとして挙げられています。ニキビや傷、かぶれなどの炎症のあとに残るもので、日光黒子や肝斑とは成り立ちが異なります。摩擦や炎症を避けることが基本になります。
まとめ|「何のシミか」が分かるまで、強い手は打たない
- シミは俗称。中身は日光黒子・肝斑・そばかす・真皮メラノサイトーシス・炎症後色素沈着などに分かれ、混在も多い
- 手の甲にもあれば日光黒子、両頬に左右対称なら肝斑を疑う。ただし確定はできない
- 日光黒子に効く設定のレーザーは、肝斑を悪化させることが知られている(指針の記述)
- 肝斑は遮光が必須で、それが最も重要。機器や化粧品はそのあと
- 形や色が変わってきたものは、美容目的で扱う前に皮膚科へ
私は種類を知らないまま皮膚科でレーザーを受けました(シミを皮膚科でレーザー治療!経過を写真付きで公開します)。結果的に問題はありませんでしたが、いま振り返ると、先に「これは何なのか」を聞いておくべきでした。同じところでつまずく人が減れば幸いです。
参考にした一次情報
- 美容医療診療指針(公益社団法人日本皮膚科学会/一般社団法人日本形成外科学会/一般社団法人日本美容皮膚科学会・令和元年度厚生労働科学特別研究事業)第1章 シミ(参照日:2026年9月23日)
本記事は公的な診療指針の内容を一般向けに紹介したものであり、診断や治療を目的とするものではありません。気になる症状がある場合は皮膚科を受診してください。
